六千個の松花堂弁当

昭和60年湯木貞一氏が、表千家大徳寺でのご法事の昼食弁当を、1日二千個、三日間に六千個注文を受け、厨房に張り出した文。

 吉兆調理場諸君に告ぐ
今般三日間に亘って
四百年の歴史のある
表千家よりの御注文は表千家
永久に残る大切な法会の御昼食の
弁当であります 一括して吉兆に
ご下命の有ったことは名誉と
責任の重大さを憶い 絶対に
よかったとよろこんでいただける
料理に仕上げねばならぬのです
各自が力を合し 心に期して
弁当料理の修業と 一人一人が
勉強となることを 自覚して
吉兆の名誉を更に輝かす
努力を切望する次第です
心身のゆるす限り頑張ってください

たどたどしいながら真摯な気持ちが伝わる文章ではないか。

当日はお昼ごろにお弁当をお渡しして、それがその場で全部お召し上がりいただけるのならいいのですが、なかには一日じゅう、日なたを持ち歩いて、お持ち帰りになる方もおられるかもしれません、お弁当はその心配が一番。で、その日、その日に煮いたもの、作ったものでないと、絶対にいけません(吉兆味ばなし三)

貞一氏は自分も一つ持ち帰って、自宅で食べたという。

今度の吉兆の不祥事、悲しいとしか言いようがない。